the Back of Moonlight
月光の裏側で
...34...
... 7.. 3 ...
第七章 加藤亨&奥田朋彦ほか<野球部編> 〜自主練〜
3,バッテリー
(水場で顔を洗う亨に)
朋彦 「…亨」
亨 「なんだ?」
朋彦 「さっき誰か奥に居たのか?」
亨 「…奥…? ああ、いや…」
朋彦 「そうか… じゃあ、そろそろ戻っても平気だよな?」
亨 「ん… あと10分くらいここで話しててやろうぜ」
朋彦 「なんだよ、やっぱり居たんだろ」
亨 「知らない振りしてやれよ」
朋彦 「もう、知ってるってーの」
亨 「えっ!?」
朋彦 「…知らないの、お前だけだっつーの」
亨 「えーっ!?」
朋彦 「ピッチャーは余計なこと知らなくていいの。
黙って投げるのに集中してればいいの」
亨 「…ひでぇ…」
朋彦 「あいつら幼なじみなんだってさ」
亨 「幼なじみ?」
朋彦 「同じ地区野球のチームでやっぱバッテリー組んでたらしいんだけど、
六年に上がる前に五十嵐が転校して、二ツ木は控えに落とされたらしいんだわ」
亨 「ああ… あいつ、たまに大暴投するからな…
五十嵐くらい上手けりゃ被害も出ないかもしれないが、
小学生の地区野球じゃそうそう上手いキャッチャーがいるわけじゃないだろうな」
朋彦 「それそれ。五年でエースだったヤツが六年で控えだぜ?
そのうえ、地区代表で県大会まで行ったのに準々決勝かなんかで大暴投やって
大量点出して負けたんだと」
亨 「きっつ〜…」
朋彦 「だろ? で、二ツ木は五十嵐に頼み込んで一緒にウチに入ったんだと!」
亨 「…そこまでやるか…」
朋彦 「何言ってんだよ…お前だって上野が今から外部受験するって言ったら
拝み倒すだろ?」
亨 「上野に拝む…? やだよ! …上野が居なくなったら困るかな?
上野以外のヤツ… う〜ん…え〜と、佐藤さんが捕る…
…佐藤さんのリード好きじゃないけど一年我慢して
五十嵐が上がってくるの待つかな」
朋彦 「…のんびりしたヤツだな… 来年勝とうって気は無いわけか?」
亨 「俺の予定では、二年の夏だな。俺、二ツ木、三島、三人揃うんだぜ?
4回戦くらいまで行けると思わないか?」
朋彦 「目標ならとりあえず2回戦突破くらいにしといたら?
…まぁ、ピッチャーはいいとしてもさ、ウチは強打者がいないからな…」
亨 「俺だけ?」
朋彦 「ピッチャーの打席当てにして3回戦突破は無理じゃない?」
亨 「ホームランバッターが欲しいよな…俺よりチャンスに打てるヤツがいたら
四番なんか喜んで譲るぜ… 五十嵐なんか良い体格してんだから
鍛えりゃモノにならねぇ?」
朋彦 「アイツの腕、ぶってぇもんなぁ… 五十嵐か…
三割打てたら正捕手決まりだっつったら
少しは打撃練習にも力入れるようになるかもな…
目は良いんだし…」
亨 「……あいつら、ホントに出来てんの?」
朋彦 「お前、見たんじゃないの?」
亨 「いや… 服が脱ぎ散らかしてあったのと人の気配だけ。
二ツ木かな…?とは思ったけど」
朋彦 「…俺は見てるから」
亨 「やってるとこ!?」
朋彦 「バカ!……そんなとこじゃなくてさ…
逆に言えば、そんなとこだけなら出来てるとは言わねぇよ…
たまに聞くじゃん…
あいつら、一年の間、ずっと自主練してたんだよな…
俺、秋に部をやめてからたまにあいつらの自主練に付き合ってたんだ。
部活やめたからって、すぐまるっきしボールに触らない生活も出来なくてさ…
二ツ木はさ、自主練の分で肩を壊さないように、
練習中の球数数えてるんだよ… で、一定数投げると勝手に抜けて
走り込みに行っちまうから上からの風当たりすっげえきつかったんだぜ」
亨 「知ってるよ。隣で投げてたから。でもピッチャーってそんなもんだろ?」
朋彦 「…と、ピッチャーは思えるわけか… だから気付かなかったんだな」
亨 「仲がいいほうは気付かなかったけど、喧嘩してたのは知ってるぜ?
俺から見れば、二ツ木は五十嵐に褒めて欲しいだけなのに、
なんで五十嵐はそれが分かんないんだ?と思ってたね。
ここで、一発、褒めてやりゃあニコニコ投げんのに、
褒める代わりに怒鳴ってるなんて、アイツ、バカだな、
怒鳴られてばっかで、二ツ木、かわいそ〜って」
朋彦 「まあな… 半泣きで投げてた時もあったからな…
ウチに来た理由聞いて、なるほど〜二ツ木は我慢してるんだな〜と
思ってたんだけど…二ツ木が爪を痛めた時に五十嵐が血相変えたの見てさ、
あれ、なんか違うかも?…って思って、その気で見てたら、全然逆だった」
亨 「へぇ?」
朋彦 「あれは相思相愛だな」
亨 「いいんじゃねえの?(笑う) ピッチャーとキャッチャーが相思相愛!
サイコーじゃん! キャッチャーのこと女房って言うくらいだから」
朋彦 「軽いヤツ… あ、出てきた… やっぱ、あいつらだ…」
亨 「しっ! 俺は知らないで通すからな?」
朋彦 「(肩をすくめる)おーい、これから自主練か?」
五十嵐 「おはようございます(帽子を取って頭を下げる)。
日が傾いて来たから一回り走ってきます。
ともさん、これ…ありがとうございました。
……加藤先輩、そんな格好してたら肩冷やしますよ。
のんびりしてて再来年背番号が二ケタになっても知りませんからね。じゃ!」
亨 「抜かせ!
……あれは撚りが戻ったな…」
朋彦 「用具室二時間でバッテリーの撚りが戻るなら安いもんさ…
(鍵を投げ上げて取る)
春から自主練も別にしたり、ぎくしゃくしてたしな…
これ以上待ってると秋に間に合わねえ」
亨 「…敏腕マネージャーだねえ…用具室二時間か…… 俺も使いてーっ!!」
朋彦 「! …誰とだよ…?」
亨 「え!? 誰って… べつに…相手は決まってないけど…」
朋彦 「……誰でもいいなら相手になるぜ?」
亨 「お前が…!?」
朋彦 「嫌ならいいさ…なんかすげえやりたそうに言うから、
溜まってんなら手伝ってやろうかって話し」
亨 「………(マジマジとまるで初めて見るように朋彦を上から下まで見て)
お前と…?」
朋彦 「…そこで視線止めるなよ… そんな目で男見てたらすぐばれちまうぜ…?」
亨 「(カッと赤くなる)うるせぇよ…!」
朋彦 「そんな考えることないだろ…? 初めてってわけでもなさそうだし。
抜くだけなら二時間も要らないぜ?」
亨 「…まあ…そうだろうけど……」
朋彦 「…(すっと手を出して亨の股間に持って行く)
…行けそうじゃん…」
亨 「やめろよ…!」
朋彦 「なんで?」
亨 「…なんでも!」
朋彦 「…さっき言ってた先輩と何かあった?」
亨 「…なにも…」
朋彦 「…俺にも言えないわけ?」
亨 「………」
朋彦 「…赤バッヂが青バッヂに手を出したら理由の如何に関わらず退学」
亨 「!…」
朋彦 「…そう聞いたんだろ? 部をやめたいってのもそのせいか?」
亨 「……」
朋彦 「俺が誰かにちくったりすると思う? 話せば少し楽になるぜ?」
亨 「……中に…」
朋彦 「…ああ…」
・・・・
(用具置場)
朋彦 「話せよ?」
亨 「…大したことないよ、今年の後半こっちの居残り少なかったから
向こうに居候したんだよ、その時面倒見てくれた先輩に…
…」
朋彦 「…なに?」
亨 「あ…? あ〜… あの〜」(にやけて)
朋彦 「…気色ワリィ…思い出し笑いとかすんなよ…」
亨 「へへへ… 一目惚れって本当にあるんだな…」
朋彦 「…本気かよ?」(眉をひそめる)
亨 「! (真顔に戻って)やっぱ話すのやめとく」
朋彦 「…待てよ…!………相思相愛……?」(低い声で確かめるように)
亨 「ん… たぶん…」(少しにやけて)
朋彦 「もういいや。やっぱ聞くのやめる」(亨から離れながら)
亨 「なんだよ…ここまで聞いといて…」(後を追う)
朋彦 「(振り返って)もう充分分かった。その人が好きなんだろ?
そんで来年従卒やるんだろ? もういい」(顔をそむける)
亨 「朋…?(腕を後ろから掴む)
…どうしたんだよ…? 俺、何か悪いこと言ったか…?」
朋彦 「……その人とは… ……」(疑問符がついているようなついていないような言い方)
亨 「……あ…」
朋彦 「言わなくていい!!」(耳を塞いで下を向いてしゃがみ込む)
亨 「(反応の大きさに驚く)…朋……ごめん。
(上から肩を抱いて)気色悪かったか…?
ごめんな…もう二度と言わないから。
聞かなかったことにしてくれよ? な?」
朋彦 「(頭を振る)…違う… 本気だと思わなかったから…
遊びなんだと思って……」
亨 「朋?…」(怪訝そうに)
朋彦 「(顔を上げて)俺… お前が…!」
亨 「朋!?」
第7章・4へつづく>>>>>
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
・・・トップ絵…なくていいならどんどん先に行けるんだけどな〜…でも、そうすると外見描写やらなくちゃならないし、それもメンドイ…Little Leagueと書いちゃったけど、地区の少年野球はLittle Leagueと呼べるのか? 2人は神奈川の出身、チーム名はFighters…ノボシリーズからの使い回しだ…ボールが一回り大きいかな〜…ソフトボールの大きさが基本なんで、どうしてもでかくなってしまうのです…小5かな…次は朋彦だ…これこそ決まってな〜い! 海神
■the Back of Moonlight(月光の裏側で) <34>■海神社 Kaijin-sya 第一版 2007/09/21
Copyright 2003-2007 WADATSUMI, yuu. All Rights Reserved.
文責・海神悠 WADATSUMI, Yuu/著作権は放棄していませんので、サイト中の文章や写真を勝手に使わないでね
◎海神別荘 Kaijin Besso◎ Since January 2004