the Back of Moonlight
月光の裏側で
...32...
... 7.. 1 ...

第七章 加藤亨&奥田朋彦ほか<野球部編> 〜自主練〜
 1,片恋

(中等部、西望寮の一室)

朋彦  「…ちわーす!亨いるか〜?……あれ…?…なんだ… …誰もいないのか…… ふ〜…
    (ドサッとベッドの端に腰掛けようとして人がいることに気付く)
     …うわっ! なんだよ、亨…いたんなら返事くらいしてくれてもいいだろ…」
亨   「………」
朋彦  「……? どうしたんだ…? 具合でも悪いのか?」
亨   「…いや……」
朋彦  「なんだよ…? 何かあったのか…? ん…と…
     …珍しいな…肩を冷やすってランニングなんてお前着なかったじゃん…
     真夏も長袖しか着なかったヤツが…野球部で何かあった?」
亨   「…野球、やめようかな…」
朋彦  「えっ!?」
亨   「………」
朋彦  「どうしたんだよ…? どっか痛めたとか?」
亨   「…いや…… なんかそれどころじゃないって気がして」
朋彦  「…?… 外を受験するとかそういうこと?」
亨   「ああ? いや、それはない。絶対無い!」
朋彦  「やっと反応がまともになったな」
亨   「…朋… なんか用か?」
朋彦  「なんか用かってことないだろ。
     今、部室行ったらお前後半一度も部に出なかったって聞いたぞ?」
亨   「…大会も終ったし、三年が出たって下の邪魔になるだけだろ」
朋彦  「そりゃそうかもしれないけどさ。
     お前が居残るって聞いて二年は期待してたと思うぜ?」
亨   「…ほぼ全員、後半は帰ったよ…」
朋彦  「だからこそ残った奴等は期待したんだろ?」
亨   「…残ってたの、五十嵐だろ? 俺、アイツ嫌い」
朋彦  「ピッチャーがキャッチャー嫌ってどうすんだよ?」
亨   「…上野がいるじゃん。俺、アイツさえいればいいもん」
朋彦  「ワガママだよな〜… 上野が怪我でもしたらどうするんだよ?
     お前の球ってそんな捕りやすい球じゃないぜ?
     五十嵐は、お前が居残るって聞いて残ったんだぜ?
     お前の球、捕りたかったんだよ、可哀相じゃないか」
亨   「へ! 同期に立派なエースピッチャーいるんだから、
     そいつのことをもっと見てやるべきだろ?
     アイツ、キャッチャーのくせに何もわかってない。だから嫌いなんだ。
     キャッチャーはな、組んだピッチャーを持ち上げてナンボなんだよ。
     なのにアイツは自分の技術を上げることばっか考えてる。
     俺の球捕りたいのだって俺の球がちょっと早いからだろ?
     もっとチームのことを考えろってんだ。
     俺達勝つために練習してるんだぜ?」
朋彦  「…お前、わざと出なかったのか…?」
亨   「秋からは新しいチームで試合するんだぜ?
     そのチームで勝つためにする練習なんだ。
     アイツが本当にチームのためを思うなら、次期エースの二ツ木に居残りを頼むべきだろ?
     俺の相手なんかしてる暇ないはずだろ?
     可哀相なのは五十嵐でなく二ツ木さ。
     アイツは五十嵐が頼めば居残ったと思うぜ…
     なのに、自分の相棒は自分でなく引退するピッチャーを見てる…
     可哀相にな…
     五十嵐もあんなことしてたらそのうち二ツ木にも三島にも愛想尽かされるぜ。
     一年だってそろそろ使えるようになってくるしな。
     元々キャッチャーで入ってくるヤツは大概ばっちり経験のあるヤツなんだから」
朋彦  「………」(ニヤニヤしている)
亨   「…なんだよ…?」
朋彦  「やっぱりお前は野球も野球部も好きなんだよな。
     なにがやめようかだよ…焦って損したぜ」
亨   「………」
朋彦  「何があったのか知らないけど、やめるなよ…後悔するぜ?…俺みたいに」
亨   「…やっぱりやめたくなかったのか…?」
朋彦  「当たり前だろ… 自分の体力の無さは分かってたけど、
     ここなら受験の心配もないし、といって甲子園目指すわけでもないから、
     好きなだけ野球が楽しく出来ると思って入ったんだぜ…?」
亨   「…でも心臓だろ…? 親が心配するの、当然だろ…」
朋彦  「…でもほんのちょっとの不整脈だぜ?
     医者だって推奨はしないけどやめるほどじゃないって言ってたのに…」
亨   「……キャッチボールでもするか?」
朋彦  「…エースとキャッチボールか…光栄だね」
亨   「そろそろ硬球に慣れなきゃな」(グローブと球を出す)
朋彦  「えっ! …手加減してくれよ…?」(歩きながら)
亨   「わかってる、わかってる。…明日からは長袖だな…」
朋彦  「よかった…」
亨   「…なにが…?」
朋彦  「マネージャーとしては、お前をやめさせたら責任問題だよ」
亨   「上でも続けるのか?」
朋彦  「もちろんさ。野球、好きだからな。
     たまにはこうしてキャッチボールの相手も出来るし…
     部室寄っていいか? 俺のグローブ、まだ部室なんだ」

・・・・・・

     (クラブハウス、部室前)
朋彦  「(ガラッと戸を開ける)…誰かいるのか? …気のせいか…」
     (グローブを出すためにロッカーを開ける)
     (後ろから亨も入ってくる)
亨   「…半月も来ないと、この臭さを忘れてたな……」
     (ぶらぶらと入って奥の用具置場の戸が開いていたのを閉めようとしてヒョイと覗く)
     !……(戸を閉めて戻る)」
朋彦  「いいぜ」
亨   「ああ…」
    (キャッチボールしながら)
朋彦  「…結局、どこにも行かずに山に籠もってたのか…?」
亨   「そんなはずあるかよ、この日焼けを見りゃわかるだろ?」
朋彦  「海でも行ったのか?」(投げる)
亨   「お前、観察眼ないなぁ、水着の日焼けじゃないだろ」(捕って投げる)
朋彦  「じゃあ、どこ行ったんだよ?」(捕って投げる…以下同じ)
亨   「ん… 自転車で中仙道を行った…」
朋彦  「へぇぇ… 一人で?」
亨   「いや… 先輩と…」
朋彦  「先輩? 野球部の?」
亨   「いや… 居残り組で一緒だった先輩と…」
朋彦  「へ〜、珍しいな、お前、けっこう人見知りするのに」
亨   「そうか?」
朋彦  「気付いてないヤツほど、そうなんだよ… 
     よかったな、お前、赤バッヂには睨まれやすいタイプだから
     知り合いが増えるのは悪くないと思うぜ…」
亨   「そうかな?」
朋彦  「だってお前、誰の従卒やんの?(捕球)
     …ちょっと手加減しろってば!(投げ返しながら)
     皆、怖がって逃げちまうぜ?
     それともやらないって決めた?」
亨   「(捕球して)悪い…… 
     一緒に行った先輩がしてやってもいいって(投げる)」
朋彦  「えっ? じゃ、今、二年なの? その先輩?」
亨   「ああ…」
朋彦  「……ふ〜〜〜ん……」

・・・・・・・

     (用具置場・・・脱ぎ散らした衣服に囲まれて)

五十嵐 「……誰だった…?」
二ツ木 「……誰だと思う?」
五十嵐 「……まさか… 加藤さん…?」
二ツ木 「……」
五十嵐 「…ばれた…?」
二ツ木 「…わからないよ… …ばれたら漸ちゃんは困る…?…
     …ばれてたにしても黙って出て行ったってことだろ?」
五十嵐 「……(周囲に散らばった服を取る)」
二ツ木 「…行っちゃうの? まだ外にいるのかもよ?」
五十嵐 「……(手を止める)」
二ツ木 「…続きは…?」
五十嵐 「…もう気が済んだだろ?」
二ツ木 「…済んでないよ。全然済んでない」
五十嵐 「…いつもいつもお前の言いなりになると思うなよ」
二ツ木 「…正捕手でいたいんだろ…?」
五十嵐 「……!! どういう意味だよ…?」
 
 第7章・2へつづく
>>>>>

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


・・・今回のトップ絵は、本用に書いた亨。最初に書いたこのイメージがスゴク強くて後で困った☆ だって中坊の身体じゃないよね…。。。これじゃ正美君が壊れちゃいそう。中坊、中坊、14才、15才…と唱えて縮小(?)しました☆ 次は二ツ木&五十嵐を描かないとなぁ…この2人全然確定してない…。。。 海神

Next... the Back of Moonlight(月光の裏側で) <33> >>>>>
<<<<< [戻る]Back... the Back of Moonlight(月光の裏側で) <31>
<<<<< Top 'the Back of Moonlight'

■the Back of Moonlight(月光の裏側で) <32>■海神社 Kaijin-sya 第一版 2007/09/07
Copyright 2003-2007 WADATSUMI, yuu. All Rights Reserved.



文責・海神悠 WADATSUMI, Yuu/著作権は放棄していませんので、サイト中の文章や写真を勝手に使わないでね
◎海神別荘 Kaijin Besso◎ Since January 2004
inserted by FC2 system