the Back of Moonlight
月光の裏側で
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第15章 アイシング 〜番外編〜多田光克&桐窪貢 with 星赤慧〜
2.
    (光克の実家/東京B区内のマンションの一室)
    (寝室)
    (風呂から上がってタオル一枚で入ってくる光克)
貢   「…!… (目線を逸らす)」
光克  「…先に寝ててよかったのに… 具合悪いのか?」
貢   「いえ、あの… 僕、ソファで寝ましょうか…?」
光克  「…俺とじゃ嫌か?」
貢   「えっ!? 嫌ってそんなっ!? せ、せ、先輩!?」
光克  「…バカ、俺と一緒のベッドじゃ嫌かって聞いてんだよ」
貢   「い、い、嫌なんてそんな…」
光克  「じゃあ、気にするな。たまにしか来ないのに、
     お前のために寝具出すのはご免だ」
貢   「あ、…そうですか、…そうですよね……」
光克  「何言ってんだよ……ちょっとどけよ」
貢   「?」
光克  「…一応な(シーツの下にバスタオルを敷く)」
貢   「す、すいません…(赤くなる)
     …あの… また出血すると思います……?」
光克  「…ああ、たぶんな。(浴衣をはおって帯を締める)
     普通の場所でも皮膚を切ればつくのに時間がかかる。
     …刃物傷よりも裂傷のほうがふさがるのが遅いしな。
     …膿む率も…
     …熱は? 熱持ってるならアイシングするぜ?」
貢   「…先輩…詳しい…」
光克  「…長くスポーツやってりゃ、誰でも詳しくなるよ」
貢   「…それにしても…」
光克  「…まあな… 小さい時から自分のことは自分でやってたし、
     …ひとよりは用心深いのかもな……」
貢   「先輩、医者になったら?」
光克  「あり得ない」
貢   「なんで? 理系でしょ?」
光克  「そういう問題じゃなく、病院も医者も患者も大嫌いだ」
貢   「ああ…」
光克  「で、アイシングは? やっとく?」
貢   「…治り、違います?」
光克  「違うな」
貢   「…じゃお願いします…」
光克  「場所が場所だからなあ…やっぱタオルで冷やすしかないか…」

・・・・・・

光克  「一応10分3セットだな。時計見てろよ」
貢   「…はい… 先輩、これ氷…?」
光克  「ああ」
貢   「…あんまり冷たくない…」
光克  「…熱があるんだよ…怪我だからな。
     …桐…」
貢   「はい?」
光克  「俺、アイツに言うぜ?」
貢   「……仕方ないですね…」
光克  「……会うのはいいけどさ、治るまで使わせるなよ?」
貢   「…はい………(小さな声)」
光克  「…桐… あいつと長く付き合うつもりなら言うことは言うんだ。
     ワガママなくらいでちょうどいい。
     アイツに合わせてたらすぐに飽きられるぜ?
     ワガママ言って焦らしてお前が引っ張るんだ。
     わかるか?」
貢   「……」
光克  「桐?」
貢   「…わかります… でもどうして僕に?」
光克  「………続いて欲しいからさ……
     …どうせ誰かと付き合うんなら俺はお前がいい」
貢   「…!………先輩…10分経ちました…………」
光克  「ああ… 氷、替えてくるよ」

・・・・・

光克  「(戻って)…桐…?」
貢   「…」
光克  「…なに、泣いてんだよ? 痛いのか?」
貢   「…ううん…… 僕、バカです……バカなんです……」
光克  「……ああ… そうかもな(セットしながら)
     アイツと長く付き合おうなんて大バカだと俺も思うよ」
貢   「…」
光克  「…でも好きなんだろ? アイツを?」
貢   「…(頷く)」
光克  「…あんなヤツと付き合ってたら体の前に心が壊れるぜ…?」
貢   「…いいんです… 壊れても……」
光克  「そう言うと思ったからさ、そうならないようにしろって言ってんだよ。
     …じゃなけりゃ、付き合うな。早く別れるんだ」
貢   「先輩…?」
光克  「…アイツが平気でいると思ってないよな…?」
貢   「………」
光克  「…氷、替えてくる」

・・・・・

貢   「どういう意味ですか?」
光克  「…桐……俺はまっさらだ。俺に傷はない。
     傷があるのは俺じゃなく、アイツのほうなんだ。
     わかるか?」
貢   「……もう一人の桐……」
光克  「…俺は誰だか知らない。だけどアイツの中に傷があるのは分かる…
     …忘れられない相手なんて失恋するより性質(たち)が悪いぜ…」
貢   「先輩はその人の名前は?」
光克  「知らない」
貢   「…桐…なんとか…っていうんでしょうね……
     死んだ恋人に勝とうなんて僕だって思ってやしません…」
光克  「…知ってるのか……
     アイツは俺には何も話さない。
     だから俺は何も知らないふりをするしかない。
     同情することも慰めることもただ傍に居る事さえ出来ない。
     …これ以上アイツの中に治らない傷を増やすな」
貢   「……過大評価しすぎですよ……」
光克  「バカ! お前、アイツと何年つきあってんだよ!?
     アイツはたくさんとやってるよ、多分な。
     でも、付き合ったヤツは多くない。
     俺が知ってる中ではお前が最長だよ。だから言ってんだよ!!
     お前、アイツの何を見てるんだ!?
     アイツをどんなヤツだと思ってる!?
     男も女も見境なしで、どんなヤツとも寝る…
     誰も愛さない……そう思うのか?
     そんなヤツとどうしてそんな苦しい思いして付き合うんだ!?
     わかってるんだろ!?」
貢   「……(体を起こす)
     先輩…… こっち来て」
光克  「………」
貢   「…泣かないで…(抱き締める)
     ……星赤さんに抱かれたかったんですか…?」
光克  「………もう、遅いんだよ」
貢   「………僕で我慢しませんか…?」
光克  「…………………」
貢   「…先輩… 僕が先輩のこと好きなのは知ってるでしょ?」
光克  「…まだそんなこと言ってんのかよ…」
貢   「…星赤さんは先輩を抱けない…代わりに僕を抱く…
     その結果が、これです(微苦笑)
     …分かってますよ… あの人が気持ちを入れて抱く時、
     僕はモノスゴイ幸福感に満たされる…
     一度味わったら、忘れられない……
     …代わりだってなんだっていい。抱いてくれるなら。
     …そうなっちゃう……ただ欲しいものを手に入れたくて。
     それしか考えられない。
     …でも、寂しくて……
     …僕だって愛したいんです……!
     ……先輩…… 愛させて……」(ぎゅうっと抱き締める)
光克  「………」
貢   「先輩………!」
光克  「…灯…消させろよ…」
貢   「……! (ふわっと体を離す)」
光克  「…(手を伸ばして灯を消す)」

15章 3 <55>に続く...>>>>>

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・・・浴衣…好きなんだよね…暑い夏は浴衣で寝てます。第二章のラストの温泉でも浴衣のシーンがあるけど、男物の着物や旅館で出すような浴衣には身八つ口が無いのにそういうシーンを作ってしまった。すぐ気がついたんだけど、直すのが面倒でほおったまま。ま、読んでる人もいなさそうだし、いいや、と。い〜かげんだよね(笑)
アイシングは氷で炎症を起こした患部を冷やして熱を取ること。捻挫、ぎっくり腰、寝違え等に。氷をビニル袋に入れてタオルで包んで患部に当てて10分。間を開けて三回…効くよ。ただし初期治療なので時間が経過してる時にはやらないで。 海神

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