the Back of Moonlight
月光の裏側で
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第13章 一緒に 〜木ノ下涼 & 井坂淳 with 八田広嗣〜
2.
(柔道場前)
八田 「…あれ…? 灯点いてないや…もしかして、俺、閉め出しくった?」
(扉に手をかける)
八田 「(開いた)開くじゃん…?(恐る恐る入る)
…誰か、居るのか…? あっ!?」
(ガタガタ、バタバタッと音がして、自分を突き飛ばすように出て行った
相手を見送って…)
八田 「…ふえ〜 びっくりした… 誰だ、今の…?
(畳へ上がる。目が慣れてきて人がいる事がわかる)
…そこに居るの、(スイッチを付ける)…木ノ下?
何やってんだよ…灯も点けずに… 今、出てったの誰?」
木ノ下 「……空手部のヤツ… あ〜あ…」(ごろっとひっくり返る)
八田 「…空手部…?(胡散臭げに)お前、まさか…」
木ノ下 「…いいだろ… 柔道部じゃなければ文句無いだろ」
八田 「あのな… 一応道場ってのは神聖なものなんだよ?
出入りに礼をするだろ? 何のためだと思ってんだ?」
木ノ下 「……(ぶすっとした顏)」
八田 「木ノ下…頼むから止めて。お願い。頼みます」(拝む)
木ノ下 「…じゃあ、今の責任、お前が取ってくれる?」
八田 「責任? なんの責任だよ?」
木ノ下 「…いいとこ邪魔した責任」
八田 「あ、の、な〜〜〜」
木ノ下 「いいじゃん。な。久しぶりにやらせろよ。でないと、俺、欲求不満」
八田 「は〜〜〜 …井坂とはどうなってんだよ…?
アイツとラブラブなんじゃなかったのか?
そういえば、最近よそよそしかったよな…?」
(木ノ下の脇に胡座をかく)
木ノ下 「…ラブラブなんかじゃねぇよ!」
八田 「…終ってるの?」
木ノ下 「…お前はそのほうがいいんだろ!」
八田 「そんなことないよ。だって、お前に辞められたら困るもん」
木ノ下 「…やめよっかな…(横を向く)」
八田 「おいおいおい… 脅す気かよ…(近づく)
井坂に振られたわけ? 聞いてやるから話せよ」
木ノ下 「……振られてないよ… 振られてはいないけど…
なんか… 俺とやるの、嫌みたい…」
八田 「やる、って… お前、何がしたいんだよ…?」
木ノ下 「……
…何も…
……ホントは何もしたくない。
一緒に居られればいいんだ。
…なんか一緒に笑ってられたらいいな…って…」
八田 「うんうん。(頷く)分かるぜ」
木ノ下 「…分かるか!?」(振り向く)
八田 「え… そりゃ… 俺もそういう彼女欲しいもん…」
木ノ下 「…あ…そ…」
八田 「…なんだよ… どうせ俺には出来ませんよ、彼女なんて。
分かってるよ」
木ノ下 「…なんで? 出来るだろ?」
八田 「…あのな…! …いいよ、もう…」
木ノ下 「?… 俺的にはお前はすっごくもてそうだけど?」
八田 「…男が好きなヤツにそう言われてもな(苦笑)」
木ノ下 「?」
八田 「……説明させんなよ… フツー女の子はデブって嫌いなんだよ」
木ノ下 「お前、べつにデブじゃないじゃん。体格が良いだけじゃん」
八田 「…だからぁ… あいつら、そんな区別つかねーって!
LLサイズの服着てるヤツはデブなの!」
木ノ下 「ああ…それはそうかも。(手を伸ばして帯の端を引っ張る)
…『あいつら』になんか言われた?」
八田 「……」
木ノ下 「(半身を起こす)…忘れろよ…
お前のカッコ良さが分かんない奴らの言うことなんか…」
八田 「………」
木ノ下 「…へぇ… 成長してるじゃん…」
八田 「えっ!? ホント!?」(頭を下げて見る)
木ノ下 「ああ…一年ぶりくらいか?」
八田 「…いや、俺、一学期だけ。夏休み以降やってない」
木ノ下 「じゃあ、でかくなってて当然じゃん…」
八田 「……なんか、……小さくなってる気がしてた…」
木ノ下 「小さく? なんで?」
八田 「え? なんとなく…」
木ノ下 「去年から身長どのくらい伸びた?」
八田 「ん…10センチくらい?」
木ノ下 「体重は?」
八田 「覚えてないけど…ここ入って20キロくらい太ったかな…」
木ノ下 「…体がでかいヤツってさ…これ、小さく見えるんだよな」
八田 「え? そうなの?」
木ノ下 「当たり前だろ… 体に合わせてでかくなるんなら
皆、もっとがんばって食うっつーの。
大体、相撲取りとかどうするんだよ…
結婚できねぇじゃん」
八田 「なんで?」
木ノ下 「…サイズが合わねーだろ!」
八田 「……………… あっ、そうか!」
木ノ下 「…な? だから体格の良いヤツのは相対的に小さく見えるわけ。
納得?」
八田 「うん!」
木ノ下 「…嬉しそうに返事すんなよな…
それより、こっち、イマイチなんだけど?」
八田 「…だって、さっきの俺みたいに誰か入ってきたらと思ったら微妙に萎える…」
木ノ下 「仕方ねぇなぁ…(立ち上がって灯を消す)」
八田 「…涼?」
木ノ下 「…目をつぶって集中しろよ…」
八田 「………」(目をつぶる)
木ノ下 「…どんな子が好きなの…?(囁くように)
……小柄で……色白で……髪が長くて……声が可愛くて……?」
八田 「う、うん… 髪は短くてもいいけど」
木ノ下 「…(耳元で女の子風の声色でゆっくり)や・だ・く・ん……
…あん……やぁぁん……ダメ…あ…や………
…こんな大きいの、入らない……いやん、ダメぇ…!……」
八田 「ぅ……」
木ノ下 「………(両手で)やん、やん、やん…っ ・・あ…ん・・・」
・・・
八田 「うっ………」
木ノ下 「…ふぅ〜〜う …一丁上がりっと」
八田 「…はぁ… は… …やば…(下を向いて手を突く)
なんかすげえヤバイことした気分…」
木ノ下 「…よくなかった?」
八田 「…逆… 」
木ノ下 「ああ… そりゃよかった」
八田 「よくねえよ! …うわ〜 やべ〜
忘れる…忘れるぞ……忘れなきゃ…」
木ノ下 「…(また女の子風に耳元で)八田君…す、き!」(ふうっと息をかける)
八田 「わ〜〜〜〜〜っ!(後ずさる)
き、木ノ下、お前、なんでそんな女の子の真似上手いんだよ!?」
木ノ下 「…そりゃ、耳年増でお喋りな姉貴が三人もいりゃあね…」
八田 「あ、そうか… そんなこと言ってたっけ…
姉貴って幾つ…?」
木ノ下 「17、18、23」
八田 「…うわ… なんかそれもすげえな…」
木ノ下 「すげぇすげぇ… 俺のことなんか男と思ってないからな。
凄まじいぜ… でも気に入ったんだろ?
(道着を脱ぐのを見ながら)もう一回いく?」
八田 「…バカ言うな。早くしないと点呼の時間に間に合わないぜ。
…井坂……?(月明かりが入る時間になってる」
木ノ下 「えっ!?」(振り向く)
井坂 「…お邪魔」(踵を返す)
木ノ下 「待てよ!」(後を追う)
八田 「おーい!閉めていいのか?」
木ノ下 「いい!」
・・・・・・・・
(寮へ向かう途上…もう周りは真っ暗。外灯の下で…)
木ノ下 「待てってば!」(腕を掴む)
ふたり 「……(息を整える)」
井坂 「………もう俺に飽きた…?」
木ノ下 「まさか!」
井坂 「…でも、…」
木ノ下 「……俺とやるの、嫌なんだろ…?」
井坂 「…なんでそう思うの?」
木ノ下 「…楽しそうじゃないし…嬉しそうでもないし…
…どうでもいいみたいだから…」
井坂 「…最初に言ったよね? 嘘やだましはなしって?」
木ノ下 「…俺、嘘もついてないし騙してもいないぜ」
井坂 「…さっきのは?」
木ノ下 「八田? 抜いてやっただけさ」
井坂 「…なんでそんなこと出来るんだよ!?」
木ノ下 「なんでって… え〜と……(自分でもよく解ってない)」
井坂 「……お前にとって俺ってなんだよ…!?」
木ノ下 「(真剣な顔で)…同じこと、俺が先に聞いていい?
お前にとって俺ってなに…?」
井坂 「………」
木ノ下 「…言えないの?」
井坂 「……違うよ… だって単語が無いから…」
木ノ下 「……ああ……うん… 無いよな………
……井坂……」
二人 「…………………………」
木ノ下 「…井坂守と夏の後、会った…?」
井坂 「え? …いや… 守に会うのなんて夏か、正月くらいだよ」
木ノ下 「…いつか忘れてくれる?」
井坂 「…涼…!?」
木ノ下 「…そいつが好きなんだろ…?」
井坂 「…!!… 違うよ…! だって守には彼女もいるし…」
木ノ下 「はは…(軽く笑う) いいよ…
だからさ… いつか、でいいんだ。
…嘘、ついてもいいし、騙されてもいいんだ…
あと四年は一緒に居られるだろ?
…一緒に練習して団体戦やって勝ったり負けたり…
峰珠祭も志峰祭もあるし、修学旅行もあるぜ…
…俺さ、…お前とは…自由時間に待ち合わせて
一緒に京都の町歩いたりとかそういうことがしたいの。
くだらねーことで笑って…
後になってさ、あんときさーって話せるような……
だから… いいんだ、いつか、で。
俺達、男同士だから、好きじゃなくても友達やれるだろ?
…単語が無くても、…一緒には居れるよ。
…今度の日曜、空いてる?」
井坂 「なんで…?」
木ノ下 「…どっか行かない? 映画でもいいし遊園地とかでもいいし」
井坂 「…図書館は?」
木ノ下 「図書館?」
井坂 「…下の図書館、借りてんの返さなきゃ」
木ノ下 「下で借りてんの? 何?」
井坂 「…ウチに無いヤツ」
木ノ下 「…ふ〜ん… じゃあ、図書館行ってそれから映画?」
井坂 「…今、あんまりいいの、やってないよ」
木ノ下 「…水差すなよ…」
井坂 「…図書館で見れば?」
木ノ下 「映画を?」
井坂 「うん。前から観たかったんだけど、
一人で観てんのもな〜って思ってたから。タダだしさ」
木ノ下 「よし、決まり!」(歩き出す)
井坂 「…涼っ!」(呼び止める)
木ノ下 「(振り返って)なに?(笑顔)」
井坂 「…俺達、ただの友達になっちゃうの?」
木ノ下 「…いや?」
井坂 「…(真剣な顔で木ノ下を見ながらこっくり頷く)」
木ノ下 「…親友でも?」(手を伸ばす)
井坂 「(手を取って)…八田とだって親友じゃん?」
木ノ下 「…まあな… でも…八田とキスはしないぜ…?」
二人 「………………………………」
木ノ下 「…はーーーーーっ(井坂を抱き締めたまま息を吐く)
…単語が無いって不便だな…
言葉が無いと、それが無いみたいだ……」
井坂 「………うん……………… 涼… 熱いよ…」(呟く…抱き締められたまま…)
木ノ下 「……あのさ…」
井坂 「うん…?」
木ノ下 「……誓って言うけど、俺がこうなるのお前にだけだから」
井坂 「…(木ノ下の胸を押して離れようとする)」
木ノ下 「(さらにぎゅっと抱き締めて)…いやか?
…友達か、それ以上か… 俺どうしたらいい?」
井坂 「…お、お、お前、口説くの、上手すぎ…!(赤くなって)
い、い、今さら、ただの友達になんか……!
涼…! (触る)」
木ノ下 「(腰を引く)井坂… 駄目だって… 俺、いっぱいいっぱい……
おい…っ!? 出すな…っ や…! ぁ…… ……淳……」
井坂 「……」
14章 1に続く...>>>>>+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
・・・このカップルは続くのかなー? ちょっと危ういよな…木ノ下の感覚に井坂がどこまでついてゆけるか? いや、井坂の危うさに木ノ下がどこまで我慢出来るか…? きっと「好き」と「わからなさ」の間で行ったり来たりするんだろうな。…思うんだけど中高で相思相愛なら同性同士の方が愛を育みやすいのでは…? 異性同士は結構いろいろ大変だよ… 海神
■the Back of Moonlight(月光の裏側で) <50>■海神社 Kaijin-sya 第一版 2008/12/18
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