the Back of Moonlight
月光の裏側で
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第13章 一緒に 〜木ノ下涼 & 井坂淳 with 八田広嗣〜
 1.

    (中等部校舎内。休み時間。特別室授業の後、廊下を歩く二ツ木に)

亨   「おい、…おいってば!」
真弓  「…なんですか…?」
亨   「無視すんなよ… この間の話…詳しく教えろ。
     なんなら情報源も連れて来い、いつもんとこ、後でな」
真弓  「…先輩!…練習の後でいいですか?」
亨   「ああ!」(立ち去る)
八田  「…今の加藤さんだろ…? なんだ…? 情報源て?」
真弓  「(振り向いて)よく聞いてくれました。
     お前のことだよ」
八田  「えっ!? 俺!?」
真弓  「そう…だから練習終ったらクラブハウスに来てよ…」
八田  「なんで俺? 情報源てなんだよ?」
真弓  「…正美さんのことを知りたいんだと」
八田  「…ああ…そういうこと… …えっ!? 
     まさか…?(亨の去った方向を指さす)」
真弓  「そういうこと(頷く)」
八田  「…はぁぁぁ… みんな、本気かよ……
     真弓… 俺、そういう相手に話せるような事知らねーぜ?」
真弓  「知ってる範囲でいんだよ。それから、真弓って言うの、止めて」
八田  「…なんで?」
真弓  「…俺を真弓って呼んでいいのは、漸ちゃんだけ」
八田  「け〜〜〜〜〜〜っ! …お前らもいいかげんにしとけよ…
     それこそ正美さんの二の舞いになってもしらねぇぞ…
     にしても、さすが加藤先輩…だよなぁ…度胸あるよなぁ…」
真弓  「おい…言わないでもわかるだろうけど…」
八田  「わかってる。言わないよ」
真弓  「…あ〜あ、余計なこと言わなきゃよかった!」

・・・・・・・・・

    (夕刻、クラブハウス奥、用具置場にて)

真弓  「…先輩…? 居ます…?」
八田  「…へぇ〜…クラブハウスの奥にこんな部屋あったの…
     俺、ここ入ったの、初めて… う…ほこりくさ…」
真弓  「…普段は鍵がかかってんだよ… 先輩?」
亨   「あ、こっち(手招きする)」
真弓  「…もしかしてまた寝てました…?」
亨   「や、…ちょっと癖になってる」
真弓  「…よだれ、拭きましょう」
亨   「あ… へへ…(拭く)」
真弓  「早く済ませましょ。八田!」
八田  「おう…」
真弓  「先輩、八田です。今の柔道部の部長。…情報源です」
亨   「ああ、連れてきたのか… 俺は… 知ってるよな?」
八田  「(苦笑)はい。八田です…と言っても大したこと知りませんよ…」
亨   「で、奥寺さんのつきあってた相手って誰?」
八田  「(苦笑)だから、あんまり知らないんです」
亨   「じゃ、お前は?(真弓を見て)お前は知ってるの?」
真弓  「…うちのOBで大学生だってことしか」
亨   「…? どういう意味だよ…?」
八田  「えーとですね。ウチの部、年に何回か、OBの稽古があるんです。
     卒業生だから南(高等部)に来るんですけど、その時はこっちも呼ばれるんで…」
亨   「……(顔が不機嫌になる)」
八田  「……正美先輩が二年の夏に来た人と…
     え〜と…えと…(頭を掻きながら肘で真弓をつつく)
     …お前、言えよ…俺、言えねぇ」
真弓  「(目線を落として)…運命的恋に落ちたと聞いてますけど」
亨   「!!!! …なんだぁそれ!? はぁぁ?
     なんの冗談だよ? お前ら、俺をなめてんのか?」
     (まだ柔道着を着ていた八田の衿を取る)
八田  「えっと、えっと、えと… だから一種の言い伝えですよ!
     本当かどうかなんて知りません!」
真弓  「…伝説みたいなもんですよ…
     その大学生と一夏つきあって、…相手が振られたって。
     なんで伝説化したかというと、そいつが寮に忍び込んで捕まったからです。
     それでばれたってわけです。
     ホントのとこがどうなのかなんて僕らは知りません。
     …たんに、そいつが思い詰めただけなのかもしれないし…」
亨   「………」
八田  「…当たり前ですけど、手引きしたヤツがいたわけで、
     柔道部は連帯責任取らされました。
     …そういう理由ってことも、部外秘ってことになってます。
     …先輩に話したのは、先輩が正美さんとつきあってるって真弓から聞いたからです。
     これ、広まって困るのは、正美さんです。…黙っててもらえますよね?」
亨   「ああ…」
真弓  「…去年のこともあって、正美さんは“アンタッチャブル”なんですよ…
     先輩は知らなかったんでしょ?」
亨   「…全然まったく(首を振る)」
真弓  「…先輩、自治会に目をつけられないようにして下さいね…
     正美さんは、自治会に睨まれてますよ…」
亨   「あ、それで…」
真弓  「思い当たること、あるんですか?」
亨   「…うん… 冬休みまで会えないって言われた…
     …怖いって……
     …あ〜もう、ちくしょうっ、俺って…!
     なんにもわかってね〜じゃん!
     くっそ!」(ガンっと近くにあったものを殴る)
真弓  「わっ! せ、先輩、手は止めましょ…手は…(思わず手を取る)
     気が収まらないなら、足にして下さい…足に…
     ふぅ…なんともなさそうですね…
     (視線を感じて)…なんですか…?」
亨   「…お前、いいピッチャーになるよ…五十嵐が惚れるだけあるな(笑う)」
真弓  「え… そんな… そうかな… へへ…
     でも先輩、本当に気をつけて下さい…
     問題起きたら、こっちにも影響しますから」
亨   「…良いヤツだと思ったけど、撤回。自分らのためかよ」
真弓  「そりゃ、そうですよ。だからこそ親身なんじゃないですか」
亨   「まあ、そうか… 今日はありがとな。お前も…八田?」
八田  「はい…たいして役に立たなくて…
     …もしどうしても知りたいんでしたら、上に聞きますけど…?」
亨   「いいよ。今度会った時に、自分で直接聞くよ」
八田  「そうですね。それがいいと思います(ほっとして顔が緩む)」
亨   「(出て行きながら)そういえば、正美先輩って強いの?」
    (鍵を締める…寮へ向かって歩きながら)
八田  「あ、強いですよ。
     ウチの柔道、立ち技中心だから、投げの練習ん時、いつも投げられ役でした。
     正美先輩と組むと上手くなるって言われてましたよ…
     だから試合前って取り合いだったって」
亨   「それで強いって言うの?」
八田  「相手に合わせられるって…器用なんじゃないかな…
     受け身が上手くてタフなら引き分けに持ち込めるから…
     団体戦なら使えます…
     重量級がいないとことやる場合ですけどね」
亨   「ふ〜ん… で、タフなの?」
八田  「(にやっと笑って)タフですよ。
     続けてれば二段取れたと思いますよ。
     その前に辞めちゃったけど」
亨   「なんで?」
八田  「…先輩、体格が…… 高校はきつかったんじゃないですか?
     関節技とか… 太れないみたいだし。
     うふふ…」
亨   「…なに?」
八田  「いえ、普通なら中等部からやってて高等部の一年の中途退部なんて負け犬でしょ?
     こそっと辞めて行くんだけど、正美先輩が辞めた時は、皆、笑って見送ったって。
     追い出し会までやって、皆で口を揃えて
     『耳や鼻がつぶれる前に辞めてくれて良かった〜』って。
     じゃあ、先輩、僕はこれで(お辞儀)」
     (柔道場へ走って行く)
亨   「ああ、今日はサンキュー!」
八田  「ど〜いたしまして〜!」
亨   「…あいつ、よく知ってんなぁ… 
     (振り向いて)一年しかかぶってないんだろ?」
真弓  「ああ、正美先輩、柔道部の伝説みたいだから」
亨   「…ああ… そういうこと… ウチのがっこ、伝説多すぎ」
真弓  「伝説の美少年ね… 歴代語るから。いないとカッコつかないんでしょ。
     まあ、僕なんかにとってはそのほうがやりやすいけど」
亨   「…うまくやれよな…
     そう言えば、ウチにはいないよな…伝説の、なんて?」
真弓  「そうですねぇ… 桐窪さんの一件があるまで丸坊主でしたからねぇ…
     丸坊主の美少年て難しくないですか?
     そういう意味では、桐窪さんなんか伝説に近いかも」
亨   「桐窪…? どこかで聞いたな…?」
真弓  「…何年か前の生徒会長ですよ…」
亨   「…いや… もっと違う場所で……
     あっ! アイツだ…! アイツ、野球部だったのか…!?
     桐窪っていつの代? 俺が入った時は、もう丸坊主じゃなかったぜ…?」
真弓  「ええ… 僕、先輩が一年の時、下見にきました。
     それで、ここは丸坊主じゃなくていいんだ…てのも、ここを選んだ理由の一つだから。
     入ってから聞いたら、その時の三年が一年の時からだって言ってましたよ…
     だから…今、高二?」
亨   「…完璧… ビンゴだ… 何があったわけ?」
真弓  「え、…当時の監督が、髪を切らない桐窪さんの髪をハサミだかバリカンだかで切って…
     その翌日、退部したって…
     で…GW明けに親が怒鳴り込んできたって……
     桐窪さんてここ(こめかみを指さす)に大きな傷があってそれで切らなかったんです。
     髪があるうちは目立たなかったんで、皆意識してなかったんだけど、
     髪が短くなったらムチャクチャ目立って、監督もヤバイと思ったらしいですね…
     その後、すぐ辞めたそうです、監督。
     で、以来、長髪じゃなければオッケー…となったわけです」
亨   「…ふ〜〜ん… お前、よくいろんなこと知ってるなぁ」
真弓  「…先輩が知らな過ぎるのでは…?」
亨   「…興味がなかっただけだよ。んで、そいつ、桐窪ってどんなヤツ?」
真弓  「………なんでですか?」(警戒気味に)
亨   「…正美先輩と同室だから…」
真弓  「(眉をひそめて)まさか、知られてるんですか?」
亨   「勘がいいな…」
真弓  「ふ〜っ まあ、大丈夫でしょ… 多分、あの人は…」
亨   「蛇の道は蛇?」
真弓  「(苦笑)多分ね」
亨   「…多分じゃねえよ、…俺、見たもん」
真弓  「え!? あ、そうですか…
     あ、そっから先、言わなくていいですから」
亨   「何、それ?」
真弓  「…知り過ぎてるのもね…
     どこかで口を滑らしちゃうかもしれないでしょ」
亨   「なるほど、そうだな…
     …お前、ホント、頭いいな…
     うん。俺、絶対、五十嵐には手、出さないから」
真弓  「……(顔をまじまじと見て、それから苦笑する)
     …先輩、悪いけど、それ、全然信用出来ない。
     でも、そう言ってくれたのは、嬉しいです。
     ……(にっこり笑って)先輩はタフで受け身が得意な人を逃がさないように、
     がんばって下さいよ! じゃ、失礼します!(お辞儀)」
亨   「ああ…(手を上げて応える)
     …タフで受け身が得意…か…
     …………(なんか妄想中)
     くそっ…何回出しゃ気が済むの?俺?… 
     トイレ・・・・」
13章 2に続く...>>>>>

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・・・伝説…ですか……私もてきと〜に作ってんな〜…まことなんか確実に伝説の部類なんだろうな(笑)あ、私は柔道の団体戦についてはほとんど知りません。柔道やってた知り合いから聞いた知識で書いてます。東京都下多摩地区では公立の場合、中学で柔道必修、高校では剣道が必修というパターンが多いですね。傘立てに傘じゃなく竹刀が立ててあった。トップ絵は木ノ下&井坂カップル…一応彼らの話なんです…この章…(^^;) 海神

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