the Back of Moonlight
月光の裏側で
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第11章 蛇の道は 〜加藤亨& 奥田朋彦〜
2.
(クラブハウス奥、用具置場にて)
亨 「……俺… 振られちまってるのかな…?(笑うように言ってるけど声が震えてる)
連絡無いのってそういうことなのかな…?
俺が分かってなかっただけ…?
…もう、とっくに終ってて、俺が分かってなかっただけなのか?」
朋彦 「……それでなんか変だったのか……
いったい何を見たんだか、聞いてもいいか?」
亨 「…キスしてた…そいつと。軽いヤツじゃなくて。
ぴったりくっついてずっとやってた…
…俺とだってあんなキスしたことないのに…
…たぶん…門が閉まる直前に入ってきた一団が来なかったら
……そのまま…やってたんじゃないかと思う……
…アレ、絶対に出来てる。(頭を膝に突っ伏したまま言い捨てるように)」
朋彦 「…亨…」
亨 「(突っ伏したまま)俺…キスは…特別だと思ってたんだ…」
朋彦 「………」
亨 「…だって抜きっこくらい好きでなくたって出来るじゃん。
…でも、キスは好きなヤツとしかする気にならないから」
朋彦 「………」
亨 「……こんなの言訳だってわかってるよ!
…先輩を口説き落とす時に、俺、絶対に遊ばない、裏切らないって言ったんだよな…
なのに、すぐお前に手出してさ……
…罰が当たったんだよな…
きっと先輩だって、俺のこと、信じられないヤツって思ってたんだよな…
…きっと…見抜いてたんだ… 俺がこういうヤツだってこと……
だから…… 待ってなんていられるはずないよな……
…あの人…同期のアイドルだって言ってたし…」
朋彦 「!… お前の付きあってる先輩って、誰?」
亨 「……」
朋彦 「…信用出来ないか?」
亨 「……名前言っても知らないと思うけど…」
朋彦 「いいよ、言って?」
亨 「…奥寺先輩…」
朋彦 「…正美さん…?」
亨 「知ってるのか!?」
朋彦 「…そうじゃないかと思ったけど…やっぱそうなのか…
二ツ木じゃなくても知ってるヤツは多いよ。
去年、お前の兄貴と壮絶なバトルやったしね」
亨 「…兄貴、なにやったの?」
朋彦 「…いろいろ。…お前は弟だから皆黙ってたんだよな…
……お前、正美さんと寝たんだろ?
…首の後ろと耳の下に傷痕、残ってなかったか?」
亨 「傷? ………ああ… あの白いの…傷痕だったのか!?
まさか兄貴かよ!?」
朋彦 「……(肩をすくめる)
…お前の兄貴、野球部のマネージャーやってたの、二年で辞めただろ?」
亨 「…受験に専念するって言ってた……違ったのかよ…」
朋彦 「…あれ、竹刀の傷だよ…割れた竹で切れて血が噴き出した…
大した怪我じゃなかったけどね…
…心臓から上は血が噴き出すから…
その場に居たヤツには箝口令引かれて公にはならなかった。
表沙汰になったら傷害事件だもんな…」
亨 「……!!」
朋彦 「それにしても、正美さんもよくお前と付き合おうと思ったよな…
嫌な思い出しかない人の弟となんて…」
亨 「…それであんなに……! なのに、俺…!」(頭を抱える)
朋彦 「…前から好きだったのか…?」
亨 「…前…?」
朋彦 「…俺らが一年の時、正美さん三年だぜ?
入部したての頃、よく顔出してたじゃん?
覚えてないの?」
亨 「…覚えてない…… あ…柔道着で柵に座ってた…?」
朋彦 「そうそう」
亨 「…前髪をゴムで縛ってた眼鏡のちびちょい変なヤツ…」
朋彦 「ぶっ… あはは…そうそれ」
亨 「…俺、何度も球、拾ってもらった…
…いい球、投げるんで野球部入ればいいのにって言ったことある……」
朋彦 「…そっか… …はぁ〜〜
なんか、こうなると運命かな…
…正美さん、もてるからなぁ…
…フェロモン出てっから、一緒にいるとドキドキしてくるんだよな…」
亨 「なにっ!?」
朋彦 「昔の話だって。…もう一年以上会ってないし。
…でも近くで話してるとだんだんこう……
…あの人、そういう嗜好隠してないから…
で、顔は女の子並に可愛いじゃん? 今はどう?
昔はほんとに可愛くてさ、ノンケでも落ちるって評判だったよ」
亨 「……っっ!!(憤激)」
朋彦 「…まあ、それだけでも…反感覚えるヤツもいるよな…
…俺はまだ「上」の話って思えるけど…
…牧村さん狙いで出入りしてたの、はっきりしてたけど
皆に可愛がられてたって……
…………………(表情が硬くなる)
今でもよく覚えてるよ…
俺、その場に居たんだ……」
亨 「…!」
朋彦 「…すげぇ怖かった……
…練習終って上の部員だけ残って部室で話してた時、突然、加藤先輩が怒鳴って…
あっ?と思った時には、噴き出した血を手で押さえて倒れてる正美さんが
床に転がってた…着ていたTシャツがどんどん血で染まって……
わらわら人が集まってきて牧村さんが抱え起こして「タオル!」って叫んだ…
止血の白いタオルもどんどん血で染まってゆく…
みんな、蒼白な顔して保健室に連れてった…」
亨 「…兄貴がやったのか…?」
朋彦 「(頷く)…部室に残ったのは俺と加藤先輩だけだった…
先輩の持った折れた竹刀に血の付いた髪の毛が絡みついてたの、
目に焼き付いてる…」
亨 「………」
朋彦 「『目障りなんだよ!』………
竹刀を振るう前に加藤さんが低く叫んだ言葉…
…俺…あの言葉が怖くて……耳の底から消えなくて…
床に倒れた正美さん…血を吸ったタオル…
…その映像に先輩の言葉が重なる………
…思い出すと眠れなくなるほど怖かったんだ。
…怖くて…… だから…
…誰かを好きになっても、絶対に表に出しちゃいけない、
ばれないようにしなきゃいけないって………
……もしも……お前にそう言われたら…
…俺、きっと死にたくなると思って…
絶対に言えない…態度にも絶対出しちゃいけない…
そう思ってたんだ………」
亨 「………」
朋彦 「…なのに… お前は、なんでもないことみたいに、先輩が好きだって言ったろ…
モノスゴク屈託のない顔して…照れたように笑ってた…
俺、あの時、マジで心臓が痛かったぜ、
ムチャクチャ後悔したよ…
なんで、もっと前にお前が好きだって言えなかったんだろう?
お前が先輩を好きになる前に。
そしたら……
そう思ったら黙ってられなかった」
亨 「………」
朋彦 「…まさか、あんなことになるとは思ってなかったけどね…
(笑いかける)
…それで…どうするの…?
先輩とはもう会わないの…?
それとも…ちゃんと会って確かめる?」
亨 「……会うよ…会うだけなら難しくないもん…」
朋彦 「あはは… そりゃそうだ」
亨 「……俺…正美先輩に相応しいかな…?」
朋彦 「…どうして…?」
亨 「……俺と会った時、先輩はすぐ気がついたぜ、兄貴に似てるって…
きっと顔見る度に嫌な気持ちがしてたよな…
…俺がガキで、相手の気持ちも考えないで押しまくるから、
言っても無駄だって思ってあの場は好きな振りしただけじゃないかな…?
…そんなもてる人が、俺なんかに…変だよ……」
朋彦 「……バカだな…相応しいもクソも……
……お前、後悔してるんだろ…?
俺とこんなことになってること?
後ろめたくなっちまったんだろ?」
亨 「……ともに嘘つくの、難しいな…」(微苦笑)
朋彦 「…(笑う)」
亨 「…とも…」(手を伸ばして朋彦の頭を傾ける……)
ふたり 「………………」
亨 「…ふぅ… これでもう先輩に何も言えないな」
朋彦 「……」(寄り掛かって頭を肩に預けたまま…)
亨 「…俺、先輩から連絡くるまで会うのよす…」
朋彦 「…!」
亨 「…今、会ったら、俺、先輩のこと罵倒しちまいそうだもん…
自分のことは棚に上げてさ。
…好きだから…待つよ…
いくら好きでも、俺が押しかけて困るのは、先輩なんだよな……
それに…」(朋彦の顔を見る)
朋彦 「……なに…?」
亨 「俺、お前のこと、好きになっちまったみたい。
な〜んか、切ないこと言うからさ…
胸がキュンキュンしちゃってさ……
お前、困る? 嫌?
先の保証は全然ないんだけど?」
朋彦 「……(一瞬あっけにとられる)
…ぷっ…… 亨… (笑いながら)
俺がここでいやだ、困るって言ったって
どっちにしろどうせまた寂しくなったら俺を呼び出すんだろ?」
亨 「…まあな……」
朋彦 「…もう、いいよ……好きにしろよ……」
(手を伸ばす)
亨 「…わりぃ…(朋彦の手に頭を下げながら)」
…キス…12章 1に続く...>>>>>+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
・・・正美君…の、「隠さない」理由を考えたくなってきた…こういう時に正美君だとスキャンダラスなことにしたいと思ってしまうのはどうしてなんだろう? 中等部の時の彼氏って誰? やっぱり柔道部? 年上なことだけは確かですが。きっと八田君が知ってるんだよね。ところで、今回と過去に一度(たぶん)、キスシーンに「キス」と書かなかったことがあります。なんか書くのも野暮だな…と思って。朋彦はこれで案外頭のいい優等生。私の中では健気キャラです。 海神
■the Back of Moonlight(月光の裏側で) <45>■海神社 Kaijin-sya 第一版 2008/09/28
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